「志学ニュース」2005年4月号より
私が初めて志学ゼミに行ったのは、小学4年生の春休みでした。まだ「田端村塾」という名前の頃です。担任の先生が産休で、代わりに来た先生の授業がわかりにくく、勉強する気がなくなってしまったことを親に愚痴ったところ、父が知り合いである当時の塾長に相談し、とりあえず塾の様子を見に行くことになりました。行ってみて、塾というよりは遊び場のようなアットホームで楽しい雰囲気であったため、そのまま通うことにしました。そして、特別、学校の勉強で悩むこともなくなり、無事卒業することができました。
ところが、中学生からは小学生までの勉強に、英語が加わります。私は小学校でローマ字も習っていなかったので、アルファベットを覚えるところからやらなければいけませんでした。そして、志学ゼミの伝統の一つである、英語の教科書の速読と暗記。これは、自分が小学生の頃から、中学生の先輩たちがやっている姿を見ていて、先生の態度も小学生に対するものとは違い、とても厳しいものを感じていました。とうとう、自分もそれをやらなければいけなくなったのです。速読は、先生に「この課は◯◯秒で読めたら合格」と、目標を決められ、そんなのは無理だ?と思いつつも、やらないわけにはいかないので必死で練習し、あと数秒で目標のタイムと言うところまでは簡単にいくものの、その数秒の壁を越えるのがとても大変でした。それがようやくできるようになったと思ったら、今度はその課の暗記で、それも目標タイムがありました。とにかく、何をするにも人よりスピードの遅い私にとっては、これがとても苦痛だったのです。
このように、英語の教科書を、数秒を競って速く読んだり、丸暗記する意味が私には全くわからず、先生に反発心を抱くようになりました。生意気にも、「こんなのは意味がない」と思っていました。また、小学時代との厳しさのギャップに、もう行きたくない、やめたい、と何度も思いました。親にそんなことを言っても、全く聞く耳持たずで、雪の降る日でも母に家から追い出されました(自転車で15分かかるので、雨や雪の日は、少しつらかったのです)。しかし、なぜか英語を嫌いになることはなく、むしろ得意科目になったのです。この大嫌いだった速読と暗記がとても大事だったことに後になってから気づきました。学校の定期試験で出される穴埋めの問題など、悩むことなくすらすら解けていました。嫌と言うほど声に出して教科書を読んでいたので、頭の中に教科書の内容が勝手に浮かんでくるようになっていたのです。
それから、志学ゼミで毎回必ずやっていた熟語のテストも非常に重要でした。これも、嫌と言うほど何度も解いていたので、熟語だけでなく、その熟語を使っている文章をまるまる覚えていました。だから、熟語の意味やその使い方なども自然に身についていたのです。このように、同じことを何度も繰り返し、体で覚えることを志学ゼミで学んだ気がします。
これは、私が最も苦手な教科であった社会でも役立ちました。私は5教科の中で好きな数学と英語は悪くない成績でしたが、社会は最悪でした。悪すぎて、成績表の偏差のグラフで枠外になってしまうほどでした。暗記が苦手な私には、社会をどうしても好きになることができませんでした。「覚えられないんだから仕方がない」と開き直っているところもあったと思います。結局、1、2年のときは社会の成績が上がることはありませんでした。しかし、都立高校志望だったので、3年生になるとそんなことを言っている場合ではありませんでした。志学ゼミの通常クラスでは、数学と英語がメインだったので、自分のクラスのない日に志学ゼミに行き、そこにある社会の問題集を繰り返し解きました。社会を好きにはなれませんでしたが、偏差値はなんとか他の科目の足を引っ張らない程度には上がってきました。これでどうにか都立高校に合格する可能性が出てきました。
ところが、一番大事な3年の2学期の内申が、それまでで最低に落ちてしまったのです。そのため、入試ではかなりの点をとらなければいけなくなってしまったのです。しかし、ここまでがんばったので志望校を変えることはしませんでした。結果はやはり、不合格でした。悔しい気持ちはありましたが、精一杯がんばったので、第一志望を変えなかったことに後悔はしませんでした。そして、併願受験した私立高校に入学しました。
高校に入ると、志学ゼミをやめたため、自分で予習復習をしなければいけなくなりました。けれども英語以外の教科では全くやらなくなってしまったので、あっという間にクラスで落ちこぼれてしまいました。私は私立大の薬学部志望だったので、受験科目は英語、数学、化学でした。それにもかかわらず、数学と化学は1、2年の間、勉強をなまけてしまったために、とても受験で通用するレベルではありませんでした。英語だけはこつこつと予習を続けていたので、ある程度の成績を維持することができましたが、3年生になって初めて受けた模試では、数学と化学はほとんど問題を解くことができず、白紙に近い状態でした。もちろん、志望校の判定はすべてEでした。
夏休みに入り、それまでなまけてしまった数学と化学の復習を重点的にやりました。化学に関しては、暗記しなくてはいけないところもあり、その部分は後まわしにしていました。本当に暗記が苦手で、どうしたら覚えられるのか考えました。語呂合わせで覚えたり、それでも覚えられないようなものは、大きな紙に覚えなくてはいけないことを書き、部屋中の壁にそれを貼りました。例えば、ベッドの上の天井にはって、それを言うことができたら寝ていいとか、風呂場にはビニールに書いたものを貼り、湯船に浸かっている時に、それを覚えられるまで出ないとか、自分でルールを決めて実行しました。これのおかげで、何とか苦手な暗記の分野の問題もできるようになりました。そして、受験当日まで、諦めずに問題集を何回も解きました。
最初の受験日、とても緊張していましたが、不思議なことに入試問題をおもしろいように解くことができました。自分では解けた手応えはあったものの、それまで成績の悪かった私が解けるくらいなら、他の人も同じくらい解けているだろうと思い、自信はあまりありませんでした。しかし結果は、模試でE判定だった大学のほとんどに合格していました。自分だけでなく、両親や担任の先生もまさか合格すると思ってなかったので、みんなびっくりしました。高校受験では失敗しましたが、最終的には中学の頃から行きたかった薬科大学に入学することができたのです。この時の達成感は今でもよく覚えています。
入試まで、何度も不安になったり、諦めそうになったりしましたが、どうしてもこの大学に行きたい!と思うことで、乗り越えることができました。受験だけではなく、何か目標を達成させるとき、一番大事なのは精神力ではないかと思います。それを達成させたいと思う気持ちを強く持ち続け、必死に努力することが成功につながる、そして自分を成長させることにもなるのではないかと思います。